23 agosto, 2012

ジャーナリストが死んだ

日本のテレビだけを観ていては、絶対に観ることはできないと思うのですが、
先日シリアの内戦取材中に政府側の銃撃によって亡くなられた
日本のジャーナリスト山本美香さんのご遺体の映像があるんです。
そして、見たい人は誰でも見ることができます。

日本では、山本さん自身が撮影していた映像と、
銃弾に倒れた後に反政府派の人物が山本さんのカメラで写した映像は流しているんですけどね。

シリアの内戦の激しさを伝えたのは佐藤さんや山本さん達フリーのジャーナリストです。
山本さんのご遺体の映像がシリア内戦の激しさを端的に伝えているということが、
伝える側の人間が被写体となりメッセージを送るという意味においてなんとも皮肉でした。

映像は亡くなられた山本美香さんのご遺体を佐藤さんが
確認していると思われる様子を写したものです。

日本のようにレイプをレイプや強姦ではなく、暴行としか報道できない国では、
山本さんのご遺体を放送するなどできないでしょうし、
ひいては、戦争の恐ろしさも、事実も報道できないのではないかと思います。

僕は、その映像を観ました。
左腕が銃弾でひじの内側あたりが大きくえぐれていました。
そこから大量出血下と思われる流血の後が、左半身脚の方にまで確認できました。
お顔は銃で撃たれたような後はなく、キレイでした。
女性ですので、それがせめてもの救いかもしれません。
佐藤さんはショックを受けられているのか、冷静さを保とうとしているのか分かりませんが、
たんたんと確認をされているように見えました。

批判を覚悟の上で書くと、興味本位が大半で、残りは最前線へ行くジャーナリストへの
尊敬の念です。

興味本位というのは具体的には、銃で撃たれたら人はどうなって死ぬのかにつきます。
それだけです。
それと、ジャーナリストへの尊敬というのは、橋田信介さんや、永井功太郎さん、長井健司さん、
他にも「地雷を踏んだらサヨウナラ」で有名な報道写真家一ノ瀬泰造さんや、ベトナム戦争の
「安全への逃避」で有名な沢田教一さんなど、常に最前線で取材され我々が絶対に知ることの
できない世界の現状を教えてくれたジャーナリストへの単純で純粋な憧れを含む感情です。
そのジャーナリストの遺体が写された映像は、そのものが強烈な戦争取材映像だと思うからです。

僕達のように戦場を知らないものでも、戦争は恐ろしいものであり、人間同士がいがみあって、
殺しあうことは愚かであることくらいは理解できます。ただし、それは頭で考えるものであって、
何か確固たる、経験や体験にを通した強烈な信念に基づくものではないです。

しかし、戦場で直に取材をする方々は、目の前を銃弾が飛び交い、兵士が撃たれればその肉片が
自分の前に「ぼとり」と落ちるようなところに身を置きます。

そのような方々の発するメッセージはそれ以上に説得力のあるものは無いんですね。
ジャーナリストももちろん商売なわけですが、
情報を提供して、ギャラを貰うそのために、かけなければならないものが段違いに大きすぎる。
それゆえ、その記事や映像は重いんですよ。

そんなジャーナリストが不運にも銃弾に倒れてしまって、更に自分自身が被写体となって、
その映像が世に送り出されて、それを僕が見た。
僕がその映像をただ漠然と写るものとだけにしかとらえられないわけがないんですね。

もう、勝手にその映像から考え出している、考え始めた時点で、その映像は既に強烈なメッセージ
となっているんですね。

因みに、佐藤さんは存じ上げていましたが、山本さんは存じ上げませんでした。
この事件で初めて知りました。

その程度なんですが、色々と思いました。

人の遺体の映像ですから、そう簡単に「是非、見て欲しい。」
とは言い難いものですが、やはりそこに戦場の真実があると言わざるを得ません。

山本美香さんのご冥福を心よりお祈りします。

2 commenti:

だい ha detto...

その映像、僕も見ました。
色々皆思う事はあると思います。
この戦争の根本はやはり宗教問題でしょう。で、このシリアの宗教はやはりイスラム。そこで起こっている戦争…
日本はイスラム社会との接点が殆どないため、イスラムで女性がどういう「階級」「扱い」にあるかと言うのを理屈ではわかっていても、本当に理解していない、というか理解出来ないと思います。僕の家の近所にはイスラム街があって、そこを歩く時にはやはりいつもとは違う空気が漂っています。危険とかそういう意味ではありません。イスラムが持つ独特の空気です。そこでの生活は皆がイメージしてる欧州のモノでは全くありません。ベルギーなのにですよ。まぁ、そういうイスラムの空気を少しばかり吸っているからか、なんとなく彼女が狙われた理由がわかる気がします。
理由は「異教徒」で「女性」だから。理由は他に何もないでしょう。日本人やアメリカ欧米人はこんな理由、全く理解出来ないでしょう。しかし、それが彼らにはもの凄く怒りを感じさせるのだと思います。
いくらジャーナリストだと言っても、女性がイスラム圏での戦争、それも最前線に行くというのは問題があると思います。

ただ、彼女が自らの命と引き換えに残した強烈なメッセージは沢山に人に色々なカタチで伝わると思います。

山本美香さんのご冥福を心よりお祈りします。

ひであき ha detto...

>だいさん、まいどです。

その後の報道で、ジャーナリストを狙う様、
政府側の指示があったとも聞きますが、
正直、なぜ銃撃されたかは不明ですね。
カメラはよく武器と誤認されると言われてますし。
それと宗教対立は日本人には難しいですね。
平和や幸福のための宗教が争いの根っこになること事態が矛盾していると思いますから。

寛容か非寛容か、人間はいつまで経っても成長しないです。

山本さんの報道をきっかけに僕は、シリアの位置を確認しましたし、内戦の理由も確認しましたし、世界遺産があることも分かりました。
僕のような人間は多いと思いますので、
それだけでも、山本さんの仕事は意味があったと思いますし、
シリアの普通の生活者の姿もテレビを通してですが、
観ることもできました。
シリアで亡くなられたのは山本さんだけではなく、
世界のシリアを見る目は、間違いなく厳しくなっています。

これからも活躍されるはずの方でしたので、
亡くなられたことは返す返す残念ですが、
山本さんのお父さんの「立派でした。」
のひとことで山本さんの短くも太い人生は
報われたと僕は思います。